【映画批評】鬼平犯科帳 血闘

池波正太郎生誕100年記念作品

新たな「時代劇」を作り出す。この流れは池波正太郎作「藤枝梅安」から続いている。
しっかりとウェルメイドに江戸風情を描いていく。人々も町並みも食べ物(いかにも美味そう)も。
新鬼平は松本幸四郎。貫禄が出てきたが、丸くならず悪人を容赦なく斬っていく”黒さ”も垣間見える。
ストーリーはオーソドックスであるが登場人物の描写がいきいきとしている。
特にサブタイトル「血闘」が暗示する泥臭く血の匂いが交差する戦いが見事。
この映画はドラマ展開とも連携している規模の大きいプロジェクトである。
それゆえ、出演者も豪華であり、それぞれの力量や艶やかさを楽しめた。
特におまき役の中村ゆりが気に入った。鬼平を慕いながら、密偵として”道具”を貫く。
劇中、「日本人って和服が似合うなぁ。DNAとセットなっているのかも」と、ゆりさんの演技を観ながらとりとめもなく考えてしまった。
そんなことを考えてしまう魅力いっぱいの時代劇だった。

市川染五郎という役者

鬼平の若い時期”長谷川銕三郎”を松本幸四郎の実子市川染五郎が演じる。なかなか味わい深い。
これが予想以上に当たり。主人公を親子で演じるわけだが、染五郎の人物描写が「鬼平」という人物を幸四郎が描く中で説得力を持たせていく。この多層性。
粋で、若さが荒々しく。さすがこの役をここまで表現できる若手役者は少なかろう。
この一本だけで判断してしまうが、歌舞伎界はもちろん日本映画においても重要な役者になりそうな予感がする。今後が期待。染五郎にも、時代劇にも。


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