【映画批評】哀れなるものたち

哀れなるものたち

人とは一体何なのかを問い続ける

まったくもって野心的で挑発的で、想像力を掻き立てる映画だ。
「人はなにをもって人たり得るのか?人の尊厳とはいかなるものか?」
成人の肉体に生後すぐの脳を移植されたベラ。あまりにもアンバランスで見ているものを不安にさせるが、それでも生き物としての生、人間としての生にまっすぐ向かっていく強い視線がある。自らの存在も、彼女を取り巻く環境もどこか捻れていて不自然ではある。そのような状況でも人は人として行くていくし、生み出された環境から雄々しく自立していく。その過程を共感していく映画なんじゃないかと思った。

現代のフランケンシュタイン

注目すべきはベラを改造したゴッドウィン博士を演じたウィリアム・デフォー。
人造人間を作り上げたことと奇矯な思考がフランケンシュタイン博士を彷彿とされる。
物語を追うとわかるように、彼自身が父親の科学者によってフランケンシュタインの怪物のなってしまっていることが寓話的でもある。その傷だらけの顔を見て彼のたどった人生に思いを馳せると、哀れにも思うのだがどこか清々しさも感じてしまう。そう彼は本当にピュアなのだ。彼の父親にいびつに形作られたとはいえ「科学者」として無邪気ささえ醸し出す。
フランケンシュタイン博士とフランケンシュタインの怪物を併せ持つ存在を演じられるのは彼しかいないと確信する。


Follow me!

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る
PAGE TOP