【映画批評】ゴジラ-1.0

新しく古いゴジラ

2023年11月公開のゴジラ。監督は山崎貴。
2016年「シン・ゴジラ」からの久しぶりの日本製実写ゴジラであるが、シン〜が従来のゴジラのお約束を徹底的に崩壊させてしまったので、次作の山崎監督の苦労はいかばかりか。
その一つの『解』が時代を遡ること。
現代に比較すると人類がゴジラに対抗する能力が著しく低くなる。
戦後の日本において米国すら手を差し伸べない状況で大いなるゴジラに対抗して足掻く。
時代が似通っており1954年版のリメイクかという意見も見受けられたが、まったく新しくそして怪獣映画の本質を鋭く描く快作となった。
私は怪獣映画の魅力は、圧倒的な脅威となる怪獣という問題をどうにかして人間たちが解決していく物語だと思っている。一番新しいゴジラはその快感に満ちていた映画だ。

感情の怪獣映画

予想外にエモーショナルな映画であった。登場人物はそれぞれの背景を抱えて感情を吐き出す。
終戦直後の瓦礫の中で子供を失った澄子(安藤サクラ)は敷島(神木隆之介)を毒づく。感情をあらわに。そこにはそうせざるを得ない戦後の状況が手に取るように伝わってくる。(安藤の演技力)
また戦争の生き残りの兵士たちは諦観しつつもあくまでも明るくゴジラに立ち向かっていく。そう彼らは絶望的な状況で命を繋いできた『幸運者』であるのだから。
はたして一番感情をあらわにしていた者は??
ゴジラである。
今まで色々なゴジラ映画を観てきたが、これほどまでにゴジラの感情に思いを馳せたことはない。
怒り。
苦しみ。
悲しみ。
もちろんゴジラが感情を吐露することはない。
だが東京に襲来するゴジラには怒りしか感じられない。
放射熱線を吐いて自らの身体も破壊されていく痛みが。
そしてゴジラ史上初めて、ゴジラが誕生する瞬間。原爆実験での被爆をゴジラの一人称で描く。
ごく一瞬でわかりにくい描写ではあるが、私はそこにゴジラの悲鳴を聞いた。
これほど感情が渦巻く怪獣映画を私は知らない。

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